コロナ禍で考える、いま表現すべきもの、いま撮影すべきもの

クライアントは、新潟県北蒲原郡に本社を置き、高品質な無垢材にこだわった家づくりを続ける住宅メーカーの夢ハウス様。夢ハウス様と私たちは、これまでに10年近くのお付き合いがあり、各種カタログ等さまざまなプロモーションツールの制作を手掛けてきました。

夢ハウス様が大切にされている考え方に「植福」というものがあります。山林を育てるということは、木を植えた人が利益を得るのではなく、長い間をかけて木々が育った時、その時を生きる世代の人たちに利益を残すこと——。
また、いまを生きる人たちは先人たちが残してくれたものに感謝し、また世代を超えて引き継いでいく——。
無垢材にこだわった家づくりの背景には、この「植福」の哲学があります。夢ハウス様では実際に、新潟県阿賀町の山中に「育成林」という広大な山林を所有し、その哲学を実践されています。

そして、夢ハウス様のもう1つの大きな特長が、オーナー（施主）様へのアフターフォローの手厚さ。販売して終わりではない、オーナー様との継続的な関係性をとても大切にされています。年間を通じて「育成林」での「伐採体験ツアー」や「植樹体験イベント」、1,000人以上を自社工場に招待して行う「大感謝祭」など、オーナー様向けのさまざまなな催しを企画し、提供されています。毎年制作し、オーナー様や住宅の購入を検討されているお客様にお配りしているカレンダーには、そんなさまざまなイベントの様子が収められることが恒例となっていました。しかし今年（2020年）は、新型コロナウイルスの影響から、大規模なイベントが軒並み中止に。そうしたなかで、改めて「オーナー様の日常にとって身近な存在であるカレンダーで何を表現し、伝えられるか？」そんな問いに向き合うことから、今回のプロジェクトははじまりました。

そこで、発想を転換し考えたのが、人を集めることができない状況であるのならば、大自然そのものである「育成林」やその敷地内にある「夢山荘」での撮影を行うのはどうだろう？ それこそが、夢ハウス様の家づくりに通底するメッセージである「感動と本物を家づくりに」の源泉なのではないか？ということでした。そして、世界的に厳しい状況であるからこそ、会社としての大切な想いや考え方を伝えるべき機会ではないかと考えました。

ムービーは、言語化できない本質をも伝えることのできる手段

また今回は、カレンダーと連動したコンテンツとして、3本のブランデッドムービーも制作。悠大な自然に抱かれた「育成林」や「夢山荘」のロケーション、そこで流れる時を記録し、体験をシェアするには、スチールだけでなくムービーが非常に有効なメディアであると考え、ご提案しました。ロケハンを重ね、移ろう時間や空気感をもていねいに納めた映像は、言葉では言い表せない自然の表情を映し出すものに。まさに「感動と本物を家づくりに」をというメッセージを体現する映像となりました。

今回制作したムービーでのコミュニケーションに、家の購入を訴求するような直接的な表現は一切ありません。しかし、ムービーという媒体には「なんかいいな」「この会社好きだな、共感するな」そうしたエモーショナルな部分に響く、言語化できない、本質の部分を伝えることのできる力があることを実感するプロジェクトとなりました。中でも圧倒的なのが「夢山荘」のテラスから見る星空です。この撮影をきっかけに、少人数で催行できるオーナー様向けの企画として「星空観測会」が誕生。「夢山荘」を訪れ、プロのカメラマンによる星空の撮影レッスンを受けられる企画は、オーナー様からも、素晴らしい体験と好評をいただいています。

今回のプロジェクトでは、さまざまな取り組みを共にしてきたなかで理解を深めてきた、夢ハウス様の魅力、大事にしている想い、伝えたいメッセージを再確認。それらへの強い共感が、プロジェクトの大きな原動力となりました。こうして完成されたコンテンツは、夢ハウス様の社員の皆様にもまた大きな共感を呼び、さまざまな機会で活用していきたいとの声をいただいています。