高知工業高等専門学校 様
DESIGN & EDUCATIONプロジェクト 教員・事務職員向け研修
ワークショップ / グラフィックレコーディング/レポート / 動画
共感できる指針をもとに授業設計を考察する 独立行政法人 国立高等専門学校機構 高知工業高等専門学校(以下、高知高専)の教職員に向け、アントレプレナーシップ教育に関する研修会を設計し、全3回のワークショップを本プロジェクト受託のウチダ人材開発センタとともに実施しました。「アントレプレナーシップ教育」という新しい取り組みに向け、DAY1とDAY2のワークショップで共有された教職員の想いや戦略から「共感できる指針」を言語化(DESIGN)。その指針をもとにDAY3にて授業設計を考察しました(EDUCATION)。さらに本プロジェクトの内容共有と、学内の相互理解を深めることを目的に事務職員向けの研修会を開催。今後の学校づくりを考える場をデザインし、プロモーション動画やSNSによる対外的な発信・広報活動を支援しました。
STORY
高専生への期待を背景に、
起業家教育の取り組みがスタート
技術と実行力を備えた高専生は、新しいビジネスを生みだす人材としても期待されています。国からの起業家教育の支援「高等専門学校スタートアップ教育環境整備事業」を背景に、創立60周年を迎えた高知高専は、起業家教育に関する取り組みが求められていました。学内的には当初、新しい教育に対する教職員の知識不足を懸念する声に加え、「そもそも私たち教職員はどのような学生を育てたいのか?」といった本質的な議論がありました。今一度「教職員一人ひとりが持つ想い」や「学校の教育方針」と向き合いたいというお考えから本プロジェクトの全体設計に「共感できる指針の言語化(DESIGN)」と「指針をもとにした授業設計の考察(EDUCATION)」を盛り込み、『DESIGN & EDUCATIONプロジェクト』という名で教職員研修をスタートさせました。教職員が対話によって互いの理解を深め、これからも一貫した指針のもとで授業や学校運営を行っていけるよう具体的には、以下のテーマで全3回のワークショップを開催しています。
〈ワークショップのテーマ〉
1回目 2023年9月「教職員のディプロマポリシーを言語化する」
2回目 2023年12月「これからの高知高専の在り方を考察する」
3回目 2024年2月「共感できる指針をもとに授業設計を考察する」
DAY1
教職員の心の中にある、ディプロマポリシーを探索
DESIGN & EDUCATION プロジェクトにおいて大きなキーになったのは、卒業認定・学位授与の方針を意味するディプロマポリシー(以下、DP)の再認識です。高知高専には「学生自らすすんで実践することによって、学問的・技術的力量を身につけ、徳性を養い、将来、創造力のある風格の高い人間・技術者として国際社会を主体的に生きることを目指させる。」という学校独自のDPがあります。今回のプロジェクトでとくに着目したのは、学校にDPがあるのと同じように、教職員一人ひとりの心の中にも「こんな学生を育てたい」という想い、いわばパーソナルDPがあるという点です。DAY1のワークショップでは、教職員一人ひとりのパーソナルDPを明らかにし、対話をもとに学校のDPとパーソナルDPの接点を探索。最後にチームでひとつのDPを作成しました。DAY1では「学生が主体的に知識やスキルを高める力」や「基礎学力」、「実践スキル」などといった技術者の育成や人間力に関わるワードがたくさん抽出されたとともに、学生の皆様が卒業後、ご自身の“生きていく力”になるであろう「挑戦心や冒険心」「他者と協働する力」「新しい価値を創造する力」を育てたいという、まさにアントレプレナーシップ教育に通じるご意見が挙がりました。
DAY2
高知高専の理想像は?みんなで学校の未来を考える
教職員のDPに向き合ったDAY1に対し、DAY2では視点を変え、「これからの高知高専の在り方」について考察。事前課題では高知高専の独自性の再認識を目的に3C分析に取り組んでいただき、ワークショップではPEST分析やクロスSWOTを活用しながら社会の変化を捉え、外部環境が学校に及ぼす影響や今後の戦略を仮説検討しました。ワークの最後には「これからの高知高専の在り方」をチームで言語化し、未来に向けた具体的なアクションについても話し合っています。一般的にはビジネスの経営判断の材料や戦略を導くために活用される分析ツールを応用しながら高知高専の理想の未来の在り方を考察した結果、以下のような想いや考えを共有いただきました。
「学生も教職員も『楽しい』と思える学校をつくりたい」
「高知高専にしかない情報セキュリティコースをもっとクローズアップしたい」
「学生が自己成長を感じられるカリキュラムをつくりたい」
その他、企業との積極的な連携に加え、性別や国(県)境を超えた多様な交流を増やしたいという想いも共有いただいています。
対話も、挑戦も恐れず、
新しい価値を創造する人を育てたい
DAY1とDAY2終了後、ここまでのワークショップの内容を整理し、教職員の想いや考えを反映した「共感できるDP」を数案ご提案しました。DAY3開催前にオンライン投票を実施し、教職員が「共感できるDP」をひとつに決定。ワークショップ内で発散された一人ひとりの言葉の表現は異なっていても、多くの教職員に共通していた想いは、「技術者としての志をもってやり抜いてほしい」ということと、そのためにはときに「他者に助けを求めることも必要である」ということでした。決定した共感できるDPは、「ひとつの志を無限大の未来に」です。メッセージには、失敗を恐れず、対話と挑戦の先で自らの志に多様な専門性や感性をクロスさせればきっと、学生たちの可能性は無限大になるという教職員の考え方を託しています。
DAY3
指針をもとに発想した大胆かつ新しいアプローチ
DAY3ではウチダ人材開発センタの講師主導のもと「共感できるDP」を指針としてインストラクショナル・デザインの手法に基づいた授業設計を考察するワークショップを実施しました。 最初に行ったのはDPに向けた「ロードマップの作成」です。「ひとつの志を無限大の未来に」というキーフレーズを頂上に、具体的な目標を明らかにしていきました。インストラクショナル・デザインにおける課題分析図をグループごとに作り上げるセッションを行ったあと、「今までの方略・授業」を共有し、最後に「これからの方略」を整理しています。「今までの方略・授業」のワークでは、これまでの取り組みの成功例や失敗談が明らかになり、目標を達成するためにどんな授業づくりをしたら良いのか、どんな仕組みをつくれば良いのかをアウトプットしていきました。「これからの方略」のアウトプットは大きく2つの傾向に分かれ、学校全体で取り組むアイデアと教員自身が「個」で取り組む授業の中でのアイデアが発想されています。いずれも時間やお金、思考の枠にとらわれない大胆かつ新しいアイデアが発想されていた点が印象的で、それぞれの考えは違えども学生に対する情熱、高知高専を良い方向に変えていこうという熱意が垣間見えるワークになりました。最終的には、アイディアを具体的にどのように授業や教育の現場に取り入れることができるか、真剣な議論がどのグループでも繰り広げられました。
教員と職員の想いを重ね学校全体の一体感をつくる
全3回の教職員研修終了後、事務職員に向けた研修会を行いました。「事務職員の視点で「教育」を考察し、教員と職員との想いを重ねよう」というテーマのもと、5名の先生方にファシリテーターとしてご参加いただき、DESIGN & EDUCATIONプロジェクトの内容を事務職員に共有。そこで発散された教員の想いと事務職員の想いをすり合わせ、参加者全員で高知高専の「教育」について対話しました。ワークでは事務職員一人ひとりが積み上げてきたキャリアを共有いただき、ご自身が担当する業務では関わることの少ない他部署の仲間や先生方のお話を聞くことで、「改めて学校の課題や強みを知ることができた」という意見や「学校で働く事務員として教育にどのように関わることができるかを考える時間になった」という感想をいただきました。先生方からも「『実は意外に知られてないけど、(事務職員は)こんなこともできる!』という話が興味深く、もっと知りたい」というお話や「事務職員の皆様がこんなにも学生たちのことを考えてくださっていることがわかり有難い気持ちになった」という感想もいただき、事務職員と先生、事務職員と学生との新たな関わり方に期待が高まっていたようです。教員、事務職員ともに、アプローチは異なっていても目指していることは同じであり、ひとつの指針のもとで学校運営を行う大切さに気づきを得る研修会となりました。
オール高知高専で挑む起業家マインドの醸成
今回実施した教職員や事務職員研修のみならず、高知高専は学生の起業家マインドを醸成するためのさまざまな施策を実施しています。たとえば、5年一貫のキャリア教育をベースに、高学年の社会実装を完成度高く行えるよう「物・カリキュラム、人」の整備を進め、専門性の高い設備を備えた起業家工房を設置したり、アントレプレナーシップ教育に関するカリキュラムを整備したり、その他、起業家推進体制の整備や産業界との連携も推進しています。デジタル・アド・サービスでは、アントレプレナーシップ教育の取り組み全体を対外的に発信するPR動画を制作し、広報活動の支援も行いました。
「一人ひとりが技術者としての志を持ち」さらに「多様な専門性・アイデア・感性をクロスさせて新たな価値を創造する」ことで無限の可能性が生まれる。この想いを教職員が共有して、高知高専は新しい一歩を踏み出しました。高知高専は、そして教職員、事務職員一人ひとりは、自らの向かうべき場所や存在意義を得心したことで、継続的な変化を続けようとしています。今後も技術者としてひとつの志を無限大の未来につなげる“みらい人”を輩出し、地域課題を解決するための活動は、アントレプレナーシップ教育を含め、高知高専をますます盛り上げていくことでしょう。
ウチダ人材開発センタ様の事例サイトで、お客様のインタビューがご覧いただけます。
https://www.uhd.co.jp/training/case/kochict.html
TEAM
- PLANNER/LECTURE:
- Eri Uchino
- DIRECTOR:
- Seiji Kato
- DESIGNER:
- Ayumi Tera/Haruka Yoshida
- ACCOUNT EXECUTIVE:
- So Ogihara
- FACILITATOR:
- Eri Uchino、So Ogihara、Takeshi Inoue、
- Jun Takano、Shiomi Nagashima、Tadashi Imamura、Seiji Kato